科学が開く料理(科学と料理の融合)

若者を中心に日本食離れが進んでいます。そんな折に、科学の知識を応用して、新しい食感、新しい味、新しい料理が開発されています。科学者と料理人の研究会も盛んです。

世界中で、科学と料理の融合に熱いまなざしが向けられています。日本料理にも取り入れられていますが、進化する料理といつまでも昔からの調理法を残しておきたい料理の両方があります。

クローズアップ現代で取り上げていました。2012.2.2

世界で広がる、科学と料理の融合

「この世で最高の料理人」とも言われる、名シェフのフェラン・アドリアさんはスペインの人です。

「分子料理法」を成功させたパイオニア的存在として多くのメディアに取り上げられ、世界の料理人達も「分子料理法」を取り入れ始めました。分子料理法は今から約20年前にフランスで生まれたようです。

そして、科学と料理の融合は中国でも取り入れられ、日本料理楽天 でも取り入れようとされています。

科学と料理の融合によって、今までにない新しい食感、新しい味、新しい見た目を感動的に味わえることになります。

調理を科学実験する

例えば、昆布だしをとるのに、何度のお湯に何分間つけておくと一番おいしいだしが出るのか、というのを実験で探りだすのです。答えは60℃で1時間だそうです。

このように、はっきりとした数値で表されると効率がよく、また家庭の主婦でも料亭に負けない味が出せそうですね。

京都での試み(日本料理を見直すきっかけになれば)

京都では科学者と料理人が集って、科学と料理の融合による新しい味の研究がされています。食材の持つ甘さを強める工夫では、カブの持つ甘さに着目しました。

カブの料理では、融点降下と呼ばれる原理を利用し、温度差によって水分と糖を分ける方法を用いました。カブをミキサーにかけ液状にして凍らせます。凍った水分は0度になると溶けますが、糖を含んだ水分は-2度でも溶けます。-2度を保つと糖を含んだ水分だけが抽出でき、この抽出した糖を別のカブに染み込ませカブの甘さを強調しました。

京都大学助教で研究会会長・山崎英恵(栄養化学)さんは、食の欧米化により日本料理離れが進み、肥満などが増え健康面でも悪影響が出ているので、体に優しい日本料理を見直すきっかけになればと研究会を立ち上げたそうです。

山崎さんが考える日本料理の特色は味、香り、食感、季節感、素材の良さなどの総合力です。科学でその一つ一つを強調することで日本料理をより魅力的にしたいと考えています。

料理人の価値観を変える

勉強会に参加している下口英樹さんは、あゆ料理で知られる料亭の主人です。特に定評があるのが、あゆの塩焼きですが下口さんは限界も感じていました。

あゆの塩焼きだけでなく、少し違う新たな試みの料理をずっと探し続けていると言うのです。そんな折に、研究会で科学者から液体窒素を紹介されました。

液体窒素は、-196℃であらゆる物を凍らせます。そして、味や香りは変わらないと言います。下口さんは、あゆの塩焼きにも使えると考え、加工した塩焼きを粉末状に砕きました。

あゆの表面積が数百倍になり口の中で香りが強く広がりました。そして、粉をすし飯にまぶした鮎寿司(あゆずし)を作り、メンバーから高い評価を受けました。

研究会で科学者たちが全く新しいアイデア味の時間差を提案しました。人間の舌は味ごとに感じるタイミングがわずかにずれています。

例えば酢みそでは、みその甘味、酢の酸味、からしの辛味の順番で舌が感じます。この3つの時間をはっきりとずらすことができれば、新しい味わいを生めるというのです。

そこで、料理人の中村元計さんは、ゼラチンと寒天を使いました。ゼラチンは30℃で、寒天は90℃で溶けるのを科学的に学んでいました。

そこで、中村さんはみそはそのまま、酢をゼラチンで固め、からしを寒天で固めて混ぜました。味わうと口の中で、最初にみその甘味がし、1秒後にゼラチンで固めた酢の酸味がし、最後に噛むと寒天で固めたからしの味が広がりました。

科学者のアイデアに科学で応えた料理人達の、全く新しい料理を生み出す試みは今も続いています。

服部幸應さん(料理評論家)の話

服部幸應さん(料理評論家)は、スタジオに科学と料理の融合した料理を持ってきていました。

アルギン酸と塩化カルシウムを融合させると、薄い皮状のものができます。この中に、いろんな物を入れることができます。ヨーグルト、果物、野菜、コーヒー、何でも入れられるそうです。

カプレーゼは、オリーブ油の中にチーズとトマト、それにバジルが漬けてあります。その中で一部、バジルをアルギン酸で固めたものが入っています。そうすると、またちょっと食感も変わるし、食べたときに香りがぶわーっと広がります。

日本酒は、-40℃で固まりますが、液体窒素で一挙に-196℃固めると100%中に混ざり物のないシャーベットができます。それにゆずをかけて食べます。日本酒もこのような形で出すと、デザートにもなるし、途中で出してもおかしくありません。

これまで、日本料理というのは保守的な面もありました。少しでも新しい物を取り入れて皆さんが喜んで食べてくれれば良いと思います。

今から40年ぐらい前、よく人工キャビアを売っていました。日本はどちらかというと、そういう人工のものに動いていきましたが、ヨーロッパでは、これを芸術に高めました。やっぱり発想の違いがあったような気がします。

平山一政さんの料理教室

平山一政さんは、40年にわたり食材と温度の関係を研究してきた専門家です。平山一政さんの料理教室では、この日のテーマは野菜の50℃洗いでした。

野菜を50℃のお湯で洗うと、汚れがよく落ち、野菜がピーンとするのです。これは、「温泉の湯で洗うと、野菜の歯ごたえが良くなる」という地元のいわれを聞いたことを検証したものです。

野菜の細胞の間にあるペクチンとCaイオンがつながり、細胞の間が固くなるからだそうです。

平山一政さんは、日本各地のいわれを科学的に調べ、それを伝えることをしています。日本の食文化の奥深さを実感したことがありました。

それは蒸し料理です。平山一政さんは、蒸気の専門家でした。蒸気を逃がさないという蒸し料理の常識を覆し、鍋の壁に穴を開けることで最適な温度調節ができる蒸し器を開発しました。ところが、大分では昔から温泉を利用して蒸し物をしていますが、蒸気を逃がして食材を蒸す・温度調節して蒸す方法が当たり前のように行われていました。

山形県小国町では、湧き水を使っておいしいご飯を炊いていました。そこで、お米を炊く直前の温度を調べました。年間をとおして12℃~16℃でした。そこで、炊飯をする水の温度を5℃ずつ上げて、おいしさの点数を科学的につけていきました。

すると、15℃の水で炊くと、一番おいしいご飯になることが分かりました。

服部幸應さん(料理評論家)の話

料理には、温度も大事ですが、お水がまた大事です。私は、47都道府県、全部の水の分析やってきました。

例えば、東京の水と京都の水と沖縄の水でお豆腐を作ります。お豆腐の量も、豆乳の量も、水の量も同じです。東京の水では木綿豆腐が出来ます。そしてこれを京都の水で作ると絹ごし豆腐みたいに柔らかいのができます。沖縄だとかたい豆腐、島豆腐、まさにあれが出来ます。

そこで、中に含まれてるものが何か調べました。1リットル当たり85mgのカルシウムイオンが入ってるのが東京の水、京都は15mg、そして沖縄は320mgも入っていました。

そういうことを組み合わせると、いろんなものが出来ます。私は、その土地で作り上げられた料理と科学で進化した料理の両方あると思います。進化もしてほしいけれども、今までのいいものは残していただきたいなと思います。

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更新日:2020/03/15