コレステロールと病気

2008年4月(平成20年4月)から、生活習慣病の予防のための特定検診が始まりました。特定検診・メタボ検診が始まって、コレステロール楽天 値に関心が高まっています。

しかし、2010年9月、日本脂質栄養学会は、「コレステロール(LDL)は高めが長生き」との指針を公表しました。コレステロールについて学びたいと思います。

脂質異常症が増えた大きな原因は、食生活の欧米化に伴って脂質の摂取量が増えたことと体を動かさなくなったことにあるようです。

コレステロールとは

コレステロールとは、細胞膜やホルモンの材料となる重要な物です。主に肝臓で作られ、タンパク質などと結合した「リポたんぱく」という形で血液中に溶け込んでいます。

LDLというリポたんぱくの形で全身に運ばれているのが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)です。

HDLというリポたんぱくの形で全身から肝臓に回収されるのが、HDLコレステロール(善玉コレステロール)です。

リポたんぱくは、他にも数種類あり、全てを含めた物が、総コレステロールです。

血液中にある脂質には中性脂肪(トリグリセライド・TG)、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸などがあります。中性脂肪とは、エネルギーを体内に貯蔵するための形で、皮下脂肪は、ほとんどが中性脂肪です。

中性脂肪が増えると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が減り、超悪玉コレステロールやLDLコレステロールが多くなると言われています。中性脂肪は、150mg/dl以上だと脂質異常症の可能性があります。

LDLコレステロール(悪玉)と動脈硬化の関係

LDLコレステロール(悪玉)が高いと、動脈の血管壁に入って酸化し、それを炎症細胞が取り込みます。その結果、炎症が進んで血管壁が膨らみ血管内部が細くなります。これが、動脈硬化です。

心臓に酸素を送る冠動脈が動脈硬化を起こすと、心筋梗塞になります。

血管壁にたまったコレステロールは、HDLとして回収されます。このためLDLは悪玉コレステロール、HDLは善玉コレステロールと呼ばれます。

一方、脳卒中については、LDLによる影響はあまりないとされているそうです。

動脈硬化が治る、血管が若返る

善玉コレステロールを増やすと、血管の中のプラーク(こぶのようになり、血管の内壁を狭くしている、血管の中の増えた脂肪を食べたマクロファージの死骸が固まったもの)の中のコレステロールを食べてくれ、動脈硬化を改善してくれます。

善玉コレステロールを増やす方法

運動

有酸素運動が良く、早歩き、ジョギングがおすすめです。善玉コレステロールを増やすには、朝晩2回走ることがよいそうです。1日30分以上、週3回以上が良いそうですが、主治医に相談してから行ってください。また、ベンチステップ運動も効果があります。高さ20cmの台を昇り降りします。例えば、右足で台に上がり、左足も上げ、そして、右足から下りて左足も下ろす、という具合です。1、2で上がり、3、4で下ります。1分間に64歳以下の人は20回のスピードで、曲は「青春時代」卒業までの~半年で~♪が合うそうです。65~74歳の人は1分間に15回の速さで、75歳以上は、1分間に10回の速さで、曲は「津軽海峡冬景色」が合うそうです。無理せずに体力に合わせて行います。また、主治医の意見を聞いてから行ってください。

魚の油
魚の油には、EPAが含まれ、漁村には動脈硬化の人が少ないそうです。また、イカ、タコは、タウリンが豊富で悪玉コレステロールを抑えます。肉の脂身や乳製品・バターは控えます。卵は人により影響のある人、無い人があるようで、確認してから制限するそうです。
オリーブオイル
取り過ぎるとカロリーが増えよくありませんが、適量だと便通もよくなり良いようです。
アルコール他
アルコール、甘いお菓子、穀類の摂り過ぎは、中性脂肪を上げるので注意が必要です。大豆は、悪玉コレステロールを減らします。1日豆腐を半丁か納豆を1~2パックを食べ続けると良いそうです。食物繊維は、小腸でコレステロールの吸収を抑えます。コレステロールの吸収と排泄は、人それぞれだそうです。だから、同じ物を食べてもコレステロールが増える人と、増えない人がいるそうです。コレステロールの吸収率を測ることもできるようになるそうです。ミニトマトを毎食5個食べると良いです。また、ビールは1杯にします。ご飯のおかわりは禁止です。杜仲茶は、悪玉コレステロールを減らすそうです。

脂質異常症(高脂血症)の診断基準

脂質異常症(高脂血症)の診断基準は、LDLコレステロール値 140mg/dl以上か、HDLコレステロール値 40mg/dl未満です。しかし、この基準から外れたとたんに心筋梗塞の危険性が高まるわけではありません。

最近では、LDLやHDL以外のコレステロールも心筋梗塞の発症とかかわっていると考えられ、総コレステロール値も重要とのことです。

心筋梗塞を発症する確率を計算できる

新潟大学医学部准教授・田辺直仁(公衆衛生学)さんら全国の医師が、追跡調査したデータを基に、5年以内に心筋梗塞を発症する確率を計算できるようにしたそうです。ホームページは、http://jals.gr.jp/です。

2010年9月、日本脂質栄養学会は、「コレステロール(LDL)は高めが長生き」との指針を公表しました。

この指針は、がんなどすべての病気を含めた「総死亡率」で分析しており、確かにコレステロールが高めだと長生きに見えます。しかし、コレステロールが低くて死亡した人たちの中には、がんなどの病気や栄養不良の人たちが多かったとも考えられます。

LDLが上がると心筋梗塞になる危険性が高まる人もいて、一概に下げなくていいとは言えません。

心筋梗塞は、性別、年齢、血圧、血糖値、喫煙とも関係が深いそうです。コレステロールを下げる薬を飲んでも、高血圧や高血糖までは改善できません。バランスの良い食事と適度な運動が大切だそうです。

女性とコレステロールの関係

女性は、若い頃に女性ホルモンで守られています。ですから、総コレステロールが高くても、男性と比べると心筋梗塞になる比率が低いそうです。

若い頃に守られていたから、50歳前後で総コレステロールが急上昇しても男性に比べて血管の若さが保たれているそうです。

女性は危険度が低いのにコレステロールの薬を飲んでいる人がいるかもしれません。しかし、勝手に薬をやめると危険ですから、主治医に相談してください。

47歳男性、LDL値171mg/dlの場合はどうする

LDL値は、171mg/dlと高かったが(正常値140未満、HDL値が正常値40以上を大幅に上回った73mg/dlだったために、薬は処方されませんでした。

この男性の頚動脈を超音波検査で調べたら、厚さが正常値の0.5mmでした。

札幌市のカレスサッポロ北光記念クリニック所長・循環器内科医・佐久間一郎さんは「高コレステロールの人に薬物治療が必要かどうかは、LDLの数値だけでなく、動脈硬化の進み具合で決めるべきだ」と言われます。

佐久間さんは、2009年から、LDLの高い患者に頚動脈を超音波検査を実施し、血管壁の厚さが1.1mm以上ある場合、心臓の冠動脈にも動脈硬化がある可能性が高い年、年齢、性別にかかわらず、薬物治療を行っています。

鶏肉以外の肉や全脂肪の乳製品、洋菓子などの摂取を減らせばLDLの数値は下がり、運動や喫煙でHDLの数値を上げられるようです。

55歳女性、LDL値170mg/dlの場合はどうする

52歳で閉経後、LDL値が170mg/dlに上がることもありました。HDL値が正常値40以上を大幅に上回った70mg/dl程度でした。

頚動脈を超音波検査で調べたら、動脈硬化はほとんどみられなかったそうです。女性は、男性よりも心臓病を発症する危険性が低く、コレステロールを下げる薬は不要と医師に言われました。

この女性は、犬の散歩時間を増やしたり、お昼の手作り弁当の肉を控えたり、間食を止めたりと生活習慣を改め、LDLが上がらないように努めています。

女性ホルモンには、動脈硬化を抑制する働きがあります。女性が心臓病を発症したり、死亡したりするのは、男性より10年程度遅れると考えてよいそうです。

閉経後の女性は、高血圧や糖尿病などの病気がなければ、LDL180までなら、生活習慣を改善すればよく、薬を使って治療する必要はないそうです。基準は男女別々につくるべきと言う医師もいます。

食事に大豆、野菜を十分に摂るとよいそうです。

魚を食べて、動脈硬化抑制

動脈硬化の進行とかかわっているのは、血中でたんぱく質と一緒にコレステロールと結びついている「脂肪酸」だそうです。

「n-3系」と呼ばれる脂肪酸は、動脈硬化を抑制する働きがあります。魚に含まれるEPAやDHAという脂肪酸もn-3系となります。

「n-6系」という脂肪酸は、体内で動脈硬化を促進する「アラキドン酸」という物質に変換されます。植物油や食肉にはn-6系の脂肪酸が多いです。

ニコークリニック院長・田中裕幸さんが、45~68歳の女性患者41人を血液検査し、脂肪酸と頚動脈の動脈硬化の関係を調べたところ、アラキドン酸が高い人ほど動脈硬化が進んでいました。ただ、アラキドン酸の摂取量が減ると出血しやすくなります。肉を食べてはダメということではなく、バランスの良い食事が重要と言っています。

新鮮な魚は、生でも、煮ても、焼いてもよいそうです。干物ばかり食べると尿酸値が高くなるそうです。

遺伝で高くなる、家族性高コレステロール血症

48歳男性は、総コレステロール値が340mg/dlと高く、心臓の検査を受けると、3本ある冠動脈のうち1本が詰まっていました。この男性は、遺伝的にコレステロールが異常に高い「家族性高コレステロール血症(FH)」と診断されていました。

約20年前にコレステロールが高かった兄が狭心症になった時に、男性も血液検査を受け兄とともに、家族性高コレステロール血症(FH)と診断されました。

コレステロールは、通常は血中から各細胞に取り込まれるが、FHの患者では、その機能が生まれつき損なわれています。このため、血中にコレステロールがたまり、心臓病を招く危険性が高まります。

家族性高コレステロール血症(FH)の患者は、全国で推定60万人と言われます。片方の親からFHの遺伝子を受け継ぐと「ヘテロ型」と呼び、両親から受け継ぐと「ホモ型」呼ばれます。ヘテロ型は、総コレステロールの値が平均350、ホモ型では、総コレステロールの値が平均700まで上がるそうです。

この家族性高コレステロール血症(FH)の人は、500人に1人いるようです。あまり知られていません。食事療法、運動療法を行ってもなかなかコレステロール値が下がらないそうです。そして、心筋梗塞を起こす確立が高くなります。なので、薬を飲むなどのきちんとした治療を受けることが大切です。

どちらも、コレステロールがアキレス腱や手の甲、まぶたなどに沈着して分厚くなる「黄色腫(おうしょくしゅ)」がみられることが多いようです。薬物治療が不可欠です。

金沢大学病院・循環器内科特任教授の馬淵宏さんは、

  1. 子どもは心臓病になる危険性が低い
  2. 成長期から薬を飲み続けても安全だという報告はない

として、男性は20歳前後、女性は30歳前後から薬を飲み始めても遅くないと、指摘しています。より、深刻なホモ型の場合には、薬だけでは不十分で、特殊な装置で血液を体外で循環させ、LDL悪玉コレステロールを取り除いて体内に戻す治療も行うそうです。

馬淵さんは、肥満ではないのに若いうちからコレステロールが高い、黄色腫があるなどの場合は、家族性高コレステロール血症(FH)の可能性高いので、循環器内科を受診して欲しいと勧めています。

薬物療法

LDL悪玉コレステロールを下げる薬
スタチン、エゼチミブなど(一般名)
中性脂肪を下げる薬
フィブラート系、EPAなど(一般名)

コレステロールの薬は、自己判断でやめないようにすることが、大切です。また、低栄養や、病気になるとコレステロールが下がるので気をつけないといけません。

スタチンの副作用が心配?

スタチンを1ヶ月飲んだら、LDLコレステロールが186が90へ、中性脂肪が202が81へと下がりました。これだけ効き目があると副作用が心配という63歳の方が相談されていました。

専門医の答えは、スタチンの副作用は横紋筋が壊れるというもので、発症率は0.02%ということでした。安全な薬だそうです。薬をやめると数値は上がるので、しばらくは飲んで、生活習慣病の方を改善していくことが必要のようです。

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更新日:2020/03/15