新治療法

今まさに骨身を削って、新しい治療法の開発に携わっている人々がたくさんおられます。がん・心疾患・脳血管障害という3大死因だけでなく、難病やアレルギーに起因するたくさんの病気、生活習慣病に由来する病気など、たんさんの病気が私たちを苦しめています。

新しい治療法が開発され、病苦から少しでも多くの人が開放されることを願います。

岡野光夫(おかのてるお)・東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長、細胞シートでスウェーデンの大学と共同研究

岡野光夫教授は、細胞シート工学を提唱し、バイオ角膜上皮の臨床をスタートさせ、心筋、血管、肝臓、膀胱などの再生医療を目指しています。

2002年、眼科医の協力のもとに、細胞シートを使って角膜の再生をする方法を進めています。

岡野光夫教授は、細胞シートにかかわって13年目だそうです。道なき道を走ってきました。誰もやらないことをやるのはとても辛いことと言われます。しかし、進歩とは一番の人がいるからできるので、頑張っているそうです。

食道がん楽天 手術後の傷口に細胞シートを貼って、狭窄を防止することを考えました。10人にやってみたら効果がありました。

臨床試験をし、審査を通って初めて認可されます。欧米では、行政や研究機関は、良いものはすぐに患者さんへ届けようという姿勢です。が、日本ではなかなかそういかないようです。

今から、スウェーデンのストックホルムの大学と共同で、バレット食道の人の術後に細胞シートを使う研究を始めるそうです。

岡野光夫教授は、新しい先端医療の確立に向かって情熱を傾けておられます。

細胞シートで、角膜や術後の傷を治す

東京女子医科大の細胞生物学者・大和雅之さんは、患者の細胞を取ってそれを増殖させて細胞シートを作っています。

食道がんの人は、がんを切り取った後の長さ8cmの傷跡に、自分の細胞を増殖して作った細胞シートを貼り付けます。そうすると、傷跡はきれいに完治します。傷の治りが早く、術後1週間で退院できるようです。また、使わない時には、食道がくっついたりすることもあるようです。それが、なくなります。自分の細胞で作っているので、アレルギーがないのが一番ですね。

細胞シートは、患者の口の粘膜から採取し、上皮細胞を取り出します。酵素で1個1個を分解し、細胞だけを培養します。細胞の種類によって培養液は変わってきます。1日で2倍、1週間で128倍、2週間で細胞シートのできあがりです。

大和雅之さんと大阪大学とが連携して、角膜に細胞シートを使う方法が始められています。ある患者さんは、0.06だった視力が0.9になったそうです。現在35000人以上の人が角膜移植を希望されているようです。

大和雅之さんは、誰でも、どこでも、細胞シートを使えるようにしたいと考えています。フランスでも大和雅之さんの細胞シートに興味を示し、ヨーロッパ全土で2020年までに、細胞シートでの治療を始めたいと考えています。

細胞生物学者・大和雅之さんは、今、耳やお腹の細胞シートを作っているそうです。心臓の細胞シートなども作られつつあります。今、臨床データーを集めている時期です。肺や膝や難病などの治療に細胞シートを使って治したいと熱く語っておられました。TV番組「夢の扉」より2010.12

腸内細菌が免疫の暴走を抑制

本田賢也・東京大学准教授(免疫学)らの研究で、自分自身の体を攻撃する免疫の過剰反応を抑える細胞を、腸内細菌の一種が増殖させることがわかりました。

慢性関節リウマチやアレルギー、腸の炎症など、免疫機能の異常が原因となる病気の新たな治療法につながると期待されます。

2010年12月23日付けの米科学誌サイエンスに発表しました。

免疫細胞の一種「制御性T細胞」は、正常な細胞を異物と認識して攻撃する免疫細胞を見つけて、その活動をやめさせるように働きます。

腸内に一般的に生息する「クロストリジウム」を無菌マウス投与すると、制御性T細胞が通常マウスと同レベルまで増加しました。この細菌を多く持つマウスでは、腸炎やアレルギー反応が起きにくいことも確認しました。

本田賢也・東京大学准教授は、「クロストリジウムが作る物質を調べ、腸炎やアレルギー疾患などの治療法に結び付けたい」と話しています。

DNAのゲノム個別解読で、病気の診断、治療へ

人間の体は約60兆個の細胞でできています。その細胞の核の中には、糸がよじれたような形の染色体が46本入っています。染色体を拡大すると、らせん状の2本のDNAが見えます。

2本のDNAの間には、4種類の化学物質・塩基がたくさん並んでいます。4種類の化学物質・塩基とは、アデニン、チミン、グアニン、シトシンです。

30億対を超える塩基が持つ情報を全て合わせたものをゲノム・全遺伝情報と呼びます。ゲノムの中で、タンパク質を作る領域が遺伝子です。

人間のゲノムは、99.9%まで共通ですが、0.1%は人によって違うそうです。配列の中で、塩基の種類が1つだけ違う部分を「スニップ」と言います。

いくつかのスニップを調べるだけなら、比較的簡単に実施できるそうです。医療界では、病気のかかりやすさを調べる遺伝子検査が行われています。これまでに、病気と関連する遺伝子のスニップなどが、1600以上見つかっています。

遺伝性アルツハイマー病、糖尿病、高血圧も遺伝と関係があるとわかってきました。高精度のゲノム解明が進めば、病気にかかわる遺伝子配列が次々に明らかになるそうです。

また、薬の効果や副作用を調べる時にも遺伝子検査は有効です。肺がん治療薬「イリノテカン」やピロリ菌除菌薬「プロトンポンプ阻害薬」は、効果を調べる遺伝子検査が保険適用されています。

事件捜査のDNA鑑定では現在、短い塩基配列の繰り返し回数を比べる方法が採用されています。科学警察研究所は、数年後をめどにスニップを比較する方法を導入する方針です。精度が200万倍も向上する計算になるようです。

また、地域ごとに多く見られるスニップを調べれば、集団の移動、民俗のルーツなどもたどることができます。

国際チームが人間のゲノムを解読するのに13年かかったが、最先端の装置を使えば、より精度の高い解析を数日で終えられるそうです。

欧米中の国際チームは、2500人のケ゜ノム解読を目指す計画を進めています。一人ひとりのゲノムわ解読し、個人の体質に合わせた医療を実現できる時代が近づいています。読売新聞、くらし・教育から。2010.11

「ユビキチン」が、がん・アレルギーを活発にする仕組み明らかに

2009年1月19日の読売新聞によると、大阪大医学系研究科の井一宏教授らのグループが、「ユビキチン」という物質ががんやアレルギーなどの原因にもなる遺伝子の働きを活発にする仕組みを明らかにしたそうです。

「ユビキチン」は、細胞質の中で不要になったたんぱく質に結合し、分解酵素が破壊する目印になることが知られている。

また、「ユビキチン」は免疫反応やDNA修復、細胞の増殖などの指令を細胞内で伝える仕組みにもかかわっている。

研究グループは、マウスの肝臓細胞の表面に炎症を起こすように刺激を与えら、「ユビキチン」が鉄分を制御するたんぱく質と結びつき、炎症やがん化などに関連する遺伝子の働きが活性化した。

岩井教授は「がんやアレルギーの炎症反応を抑える薬の開発に役立つかもしれない」と話しているそうです。成果は、ネイチャー・セルバイオロジーに発表されました。

蛍光試薬、赤外線を当て、微小肝細胞がんを検出

大阪府立成人病センターは、2008年10月27日、肝細胞ガンの手術中、既存の蛍光試薬を注射した患者の患部に赤外線を当てると、これまで見えなかった数ミリ程度のがん細胞を検出する手法を開発したと発表した。

肝細胞ガンは手術をしても、微小ながん細胞の取り残しが多く、再発防止に役立つとしている

消化器外科の山田晃正副部長らによると、肝機能を把握するための試薬「インドシアニングリーン」は、投与後赤外線を当てると光を発することは知られていたが、肝細胞がんの組織に特異的に長く残ることを発見した。

さらに、乳がん患者の手術中に、この光を同時に観察できるように開発された赤外線カメラを、肝細胞がん患者の手術に利用したところ、がん細胞の部分だけが光った。

2007年2月から2008年8月まで、同カメラを使った手術例39のうち7例で、従来の超音波検査などでは見つからなかった5~3ミリの小さながん細胞を発見し、取り除くことができた。

2008年10月28日 読売新聞から

「ES細胞から心筋」を高効率化 10倍~20倍に
千葉大・小室一成教授ら

様々な臓器や組織の細胞に変化できる胚性幹細胞(ES細胞)から、心筋細胞を作る効率を10~20倍に高めるたんぱく質を、千葉大・小室一成教授らが発見した。 ES細胞やiPS細胞(新型万能細胞)は、心筋細胞に変化することができるが、その効率は1%程度。再生医療の実現には、より高い効率で心筋を得る方法が課題となっていた。

研究チームは、これまでインスリンホルモンとのかかわりが指摘されていた「IGFBP-4」というたんぱく質に着目。このたんぱく質を、マウスES細胞の培養液に加えたところ、心筋細胞に変化する効率が10~20倍に上がった。

小室教授は「IGFBP-4」を心筋梗塞患者に注射することで、ES細胞から、心筋細胞を作るように、心臓に存在する幹細胞を心筋細胞に変化させられれば、機能を回復できる可能性がある」としている。2008.6.8 読売新聞から

痛みを輸送する、たんぱく質を発見
岡山大薬学部・森山教授ら

 岡山大学薬学部の森山芳則教授らが、痛みの伝達などにかかわるとされる物質アデノシン3リン酸(ATP)を輸送するたんぱく質を発見した。

このたんぱく質を調節する方法ががわかれば、末期がんに伴う痛みなど、激痛を抑える新たな「鎮痛剤」の開発につながると期待される。

ATPは、生物の体内でたんぱく質などが活動するためのエネルギー源として知られる。最近は、血管の収縮や痛みなどの刺激を、細胞の間で伝達する神経伝達物質として働くこともわかってきた。しかし、ATPを輸送する物質はわかっていなかった。

森山教授らは、神経伝達物質の一種のグルタミン酸を輸送する物質に、構造が似たたんぱく質を発見。これが、ATPを輸送していることを実験で確かめた。別の神経伝達物質のセロトニンを輸送する物質を抑える薬剤は、抗うつ剤として使われている。

 痛みの研究に詳しい井上和秀・九州大学教授(神経薬理学)は「世界で1500万人以上の患者が苦しんでいる激痛『神経因性疼痛』などの治療薬を開発できる可能性がある」としている。

成果は米科学アカデミー紀要に発表された。2008.5.12 読売新聞

心筋梗塞、脳梗塞の血栓を防ぐ抗体を発見

滋賀県立大の高山博史教授(血液内科学)のグループが、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぐ抗体を発見した。

臨床実験で安全性が証明されれば、副作用のない新薬になる可能性があり、高山教授は10年以内に実用化したいとしている。

研究成果は、米医学雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に掲載された。

血栓は、傷ついた血管が修復される際、血管組織にあるコラーゲンと血小板が結合して起こる止血の反応が過剰な場合にできる。血栓治療薬として使われているアスピリンなどは、血小板の働きも抑えるため体内で出血が起き易くなる副作用がある

高山教授らは、血小板とコラーゲンの結合を防げる抗体を持ち、血液が固まり難い患者がいることを知った。この抗体が出血を抑えながら血栓症治療に生かせるのではないかと考え、抗体を人工的に作る事に成功。動物実験を重ねた結果、血液が固まりにくくなるのを確認したという。2008.4.3 読売新聞

心筋梗塞、脳梗塞の患者さんは、とても多いと思う。そして、再発をするかもしれないと、とても不安な気持ちでおられると思う。その方たちにとって10年という月日は長い。副作用のない新薬が、早く実用化できるようにお願いします。

肝硬変完治の治療薬の実用化を目指す

2008.3.30日の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー電子版に「札幌医科大の新津洋司教授らのグループが肝硬変を完治させる治療法を開発した」と掲載された。

肝硬変は、ウイルス感染などにより肝臓で増殖した「星状細胞」が多量のコラーゲンを分泌し、肝臓が硬化する病気。肝硬変や、それが進んだ肝癌で亡くなる人は、全国で年間約4万人にのぼる。

新津洋司教授らのグループは、星状細胞がコラーゲンを作るのに必要なたんぱく質「HSP47」に注目し、その働きを抑える物質「SiRNA」で薬を開発した。

 通常なら4~5週間で死ぬ肝硬変のマウスに投与したところ、増殖していた星状細胞も帰依、肝硬変が完治したことが確認された。

肝硬変、肝臓ガンで療養されている人に、1日でも早く肝硬変完治というすばらしい薬を届けてあげて欲しい。 2008.3.31 読売新聞から

ピロリ菌が胃がんをおこすしくみを解明

2007.5.17日のネイチャーに北海道大学遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授らのチームが胃の中に生息するヘリコパクター・ピロリ菌が、胃粘膜を壊し、胃炎や胃潰瘍・胃がんを引き起こすことに関与するたんぱく質「PAR1」を特定し発表する。

ピロリ菌は内部にCagAというたんぱく質を持ち、胃粘膜を形成する上皮細胞に付着すると、まず注射のようなトゲでCagAを打ち込む。

上皮細胞は互いに結合して胃粘膜の働きをするが、細胞内に侵入したCagAは、細胞結合にかかわるたんぱく質「PAR1」に取り付きその機能を失わせることを確認した。

その結果、上皮細胞がはがれ落ち、進行すると謂えん胃潰瘍を引き起こす。さらに、CagAが細胞増殖を制御するたんぱく質に取り付くと、これが、活性化され上皮細胞が異常増殖し胃がん発症の原因となることもわかった。

畠山教授は「胃がんは肺がんと並んで日本人の死因の上位を占める。研究成果がピロリ菌除菌の推進などを促し、死亡率低下につながることを期待したい」と話されている。2007.5.17 読売新聞から

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更新日:2020/03/15